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四半世紀の時を越えて

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4月上旬東京で開催された日本眼科学会に行ってきました。眼科専門医は取得さえすれば一生ついて回るものではなく、学会などで100単位を積み重ね5年ごとに更新していかなければなりません。朝早く熊本を出発しても会場入りできるのは昼近くになるため昼食がてらランチョンセミナーを聞くことになります。2日目は午後からプログラムがほとんどないため、浪人時代にお世話になった数学講師K先生はどうされているかと会いたくなり、事前に塾に連絡しておいた渋谷の個人塾までSUICAを使って山手線で向かった。先生にお会いするのは大学合格を報告に代々木ゼミナール原宿校に行って以来実に25年ぶりである。当時は代ゼミ英語の金ピカ先生がよくメディアに出ていた時代からしばらく後の時代でK先生こと木須先生は代々木本校から毎週代ゼミ福岡校に飛行機で講義に来られていた。まだ若くパワーがあり聞き取りやすい声質であり髪はよく寝ぐせがついていて女子生徒からかわいいと言われていたようなイメージの先生である。当時3大予備校の一つ代々木ゼミナールは講師の代ゼミと言われていて予備校講師についての評価本までもが存在した。木須一郎先生も当然載っていた。地元の高校の授業しか受けたことがなかった私には代々木本校から来られる先生たちの授業には大きなカルチャーショックを受けたものだった。先生の講義はちょっと変わっていた。まず生徒に問題をやらせてしばらく考えさせる。その後黒板で一緒に問題を解いていくというスタイルだった。数学という教科は授業を聞いただけで出来るようにはならない。自分で頭を使わなければできるようにはならないのだということを教えてくださった先生だった。先生の個人塾KMSは渋谷駅から南東方向、大通りから1本入ったところにあった。用事がなければこのエリアには立ち入ることはまずないだろう。横に立派な神社がありここが渋谷とは思えないくらい静かなところだった。大学生時代は住んでいたアパートから渋谷まで電車で割と近かったため用もないのによく出かけていたのだが、そこは初めて踏み入れる場所だった。4階建てのこじんまりした古びたビルの2階窓ガラスにブルーのKMSの文字。足音だけが響く狭い階段を上がると教室は電気が消えていてだれもいない様子だ。予定時間より30分早く着いたため一度下に降りて隣の神社の境内に入りお参りして周辺を散策した後、小雨の降る中どこから来られるのか少し緊張しながら待っていると意外にも木須先生は神社の階段を降りてこっちへ向かってこられた。毎日お参りしてから塾に来られるのだとか。「この年になって特に目標とかあるわけじゃないんだけど」と。さすがに25年時が経つと白髪が増え外見は変わってはおられたが間違いなくあの木須先生だ。彼の後から2階の教室へ上がると「まあまあいいからどこでもいいから椅子にかけていて」と言われ30以上はある生徒の机をひとつずつ拭きはじめた。掃除は毎日のルーティンらしく一通り拭き終わると私の自己紹介から福岡校と原宿校で先生の単科を受講していたことを伝え、現在は熊本で眼科医としてやっていること、お会いするのはちょうど25年ぶりだということを伝えた。塾が始まるまでの2~30分ほどだったが色々と話していただいた。話し方は昔とあまりお変わりなく安心した。「目は昔から良かったんだけど最近は老眼がねえ」現在は60歳とのこと、もう辞めてもいいのだけどと言われるが今が一番お忙しいのだとか。